1998 AUTUMN BOOK COLLECTION
   放浪と漂泊への想いほか


                                  新しい本が上です。(98/10/29更新)




  高橋健司『空の名前』 光琳社 97/6. 1429円(ワイド版)

       


     日本人の心のベストセラーといわれるこの天気図鑑は47万部売れているそうだ。

     雲というのはこんなに表情があって、さまざまな形状があって、名称があって、

    壮大で雄大で神秘的であったのかと思い出させてくれる写真集である。

     雲の写真をながめて、名称の文章を読んで、ときにはじっさいに自分が見た記憶のある

    雲の情景雄大さを思い出していると、心は自然と和み、安らかになっていることに気づく。

     自然の風景はその美しさ雄大さに、いっとき、われを忘れ去らせてくれる。

     そのあいだに心の浄化がおこっているのだろうか。

     この図鑑を頭にしまいこんで、道を歩いている時などにふと空を見あげたい。

     しぜんに心が澄んでいる自分に気づくことだろう。




  末木文美士『日本仏教史 思想史としてのアプローチ 新潮文庫 92/2. 552円

      


     日本仏教史は日本人の心の歴史であるわけだから、

    それを知らないのにはあまりにも惜しい。

     一読してみて、仏教がテーマとしてきた地獄であるとか本覚思想とか宗派とか、

    わたしにとってはどうでもいいことが多いように思われた。

     とりあえずは空白だった日本仏教史にすこしの知識が加えられました。




  鎌田茂雄『菜根譚 中国の人生訓に学ぶ NHKライブラリー 97/2. 971円

        


     ひじょうによい人生訓だった。

     「足ることを知る」「死を見つめて生きる」「悟境に遊ぶ」などのテーマがいい。

     とくに満足する心を知ることが心豊かなことだというところがいい。

     不満や不足に悩まされていては、心が安らかになるわけがない。

     不足していることを嘆くのではなく、その状態に心が満足すればいいのである。

     「不自由を常と思えば不足なし」――この言葉にすべてが凝縮されている。

     状況や環境がいかに酷なものであっても、心を澄んだ自然のように保てば、

    なにものにもわずらわされることはない。

     状況ではなくて、心なのだ――そのことをこの人生訓を貫いて言っている。





  藤原新也『印度放浪』  朝日文芸文庫 93/6. 1000円 

       


     ざらざらした材質のカバー、三冊分はある分厚さ、インドの猥雑で壮絶な写真、

    とてもいい感じで異郷に赴いた風になる写真集である。

     インド人というのは、人間の生きざまというのを如実に現していて、すさまじい。

     日本のように生も病も死もすべて施設に隠され、人生そのものまでもが

    郊外住宅地のように理路整然と整理されたうら寒い国とは大違いだ。

     聖も俗もごっちゃにされ、人間の生きざまが赤裸々にさらされたインドの風貌を、

    印象深い旅行記とともに、この写真集は伝えている。




  『山頭火 日記(一)』 春陽堂 山頭火文庫 89/11. 650円(古本)

       山頭火日記〈1〉


     本や新聞を読んだり、酒を飲んだり、案外ふつうの人のような生活をしている山頭火の日記。

     入浴や食べることの喜び、山々の美しさが描かれているのがよい。

     皮肉なことだが、この日記は昭和恐慌のはじまった昭和5年から書きはじめられていて、

    けれども経済を捨てた山頭火にはどこ吹く風のようである。

     わたしは俳句をよく味わえないのだが、すこしは心が動かされる詩にも出会った。

     「けふのべんたうも草のうへにて」

     「ひとりきりの湯で思ふこともない」

     こんな句が――あるいは情景が――いいな。




  赤坂憲雄『漂泊の精神史 柳田国男の発生 小学館ライブラリー 94/11. 1070円

       


     漂泊者の精神史というよりか、柳田国男が漂泊者をどう捉えてきたかという本だ。

     定住の時代のはざまにおいて、漂泊者がどう評価されてきたか、

    天皇と差別というテーマを奥に据えながら、考察している。

     わたしは漂泊者列伝のような本を期待していたわけだが、

    ヒジリやサンカ、イタコ、ホイトなどの漂泊者たちのほんの一端に触れることができた。

     漂泊は中世に語りや芸能と結びついていたが(盲目者は目に見えない音響を

    伝えるのに適していた)、文字の文化にうつったときに漂泊者たちは没落していった。




  今井雅晴『日本の奇僧・快僧』 講談社現代新書 95/11. 650円

      日本の奇僧・快僧


     この本では知的アウトサイダーとしての僧侶たちがとりあげられている。

     道鏡、西行、文覚、親鸞、日蓮、一遍、尊雲、一休、快川、天海、といった人たちだ。

     かつての仏教者が政治権力者たちと近しいのは、ちょっと幻滅する。

     権力や勢力によって僧侶が評価されてきたとしたら、それは仏教ではないのではないか。




  上野圭一『ヒーリング・ボディ からだを超えるからだ サンマーク文庫 94. 600円

       


     心を癒すためにはとうぜんその表現であるからだを癒さなければならない。

     ただからだというのは「感覚」だから、それを言葉で切り分けて表現するのは難しい。

     ということでこの本を読んでみたが、LSD体験や体外離脱などのかなり具体的な

    体験談が書かれており、ちょっと神秘的すぎる内容であった。

     信じるか信じないかの判断は、それによって知識は閉ざされてしまうので、

    この件に関してはわたしはまだどちらとも判断しないつもりだし、できもしない。




  大村英昭『日本人の心の習慣 鎮めの文化論 NHKライブラリー 97/8. 920円

       


     これはおもしろい本だった。

     現代は欲望や情念に煽られる時代だが、古来の日本は鎮める文化だった。

     その対比が目を醒まさせるが、その鎮める対象というのがオオヤケに犠牲にされた

    ワタクシの羨みや祟りだったというのは、かなり個人主義的な風土を思わせるのである。

     現代のほうが世間や会社といったオオヤケに人生をつぶされているほうが多い。

     煽る文化は立身出世やガンバリズムと結びつき、分を知り安らかに生きてきた貧困者の

    高貴さを蹴り去り、われわれを永遠の不満に罰せられているような状況に追いこむ。

     煽る文化より、世捨て、隠遁、中庸に生きる誇りをもてた鎮めの文化のほうが幸福だ。




  高橋英夫『西行』 岩波新書 93/4. 620円

       


     仏教者というよりか歌人の趣のほうが強いのがわたしにはふしぎだった。

     この本の中の西行の生涯と歌は残念ながらほとんど心に残らなかった。

     ふたつだけ印象に残った箇所は、隠遁者は世を捨てたはずなのに、

    そのことで世に認められることを願っていたということや(欲を捨てるという「欲」を

    捨てられなかったわけだ)、漂泊者は貴人の流浪の系譜として

    位置づけられるかもしれないということだ。





  梅谷繁樹『捨聖・一遍上人』 講談社現代新書 95/12. 650円

       


     捨てて捨てて漂泊に生きた一遍の生涯から、なんらかの解放感、癒しといったものを

    読みとりたいと思ってこの本を手にとってみたのだが、そういうのは得られなかった。

     現代人も漂泊に生きることができるのかという答えをわたしは求めているのだろうか。

     捨てる生き方というのは心の平穏を求めるためのいちばんの道標であり、

    欲望と蓄積を過剰に求める現代人への解毒剤・清涼剤になるだろう。

     「名声を求め、人々の帰依を望み、評判を求めると、身も心も疲れる。

     功徳を積み、善根を修めようとすれば、いらぬ希望が多くなる。

     ひとりぼっちで何の地位もないのが何よりである。

     ……閑居の世捨人は貧しさを楽しみとし、坐禅して深い定に入る人は閑かさを友とする」

     これは一遍がわが先達といった空也のことばである。





  『クリシュナムルティの瞑想録 自由への飛翔 サンマーク文庫 82/1. 700円

       


     そうか、クリシュナムルティの本が文庫になったのか、これは読まずにはいられない。

     久しぶりにクリシュナムルティの本を読むと、この人が思考や言葉とというものを

    どれだけ否定しているか、あらためて思い知らされる。

     「理知はわれわれ人間の問題を何ひとつ解決することはないだろう。

    思考はわれわれの苦悶や不安を克服し、乗り越えるために何度も何度も試行を

    繰り返してきた。思考は教会を建立し、救世主や導師を生み出してきた。

    思考は国家あるいは国民性といったものを考え出し、さらに国民を互いに反目し、

    対立しあう様々な集団や階級に分けてきた。思考は人と人とを引き離し、孤立させ、

    そのようにして混乱と大きな悲しみをもたらしてきた。

     ――このように思考のすることはいずれも必ずや危険と不安を招くのである」

     どうだろうか、徹底した思考の否定である。

     さらに思考は既知のものであり、過去であり、記憶なのであって、

    未知なものをいっさい知ることができないという。

     クリシュナムルティは、全人類が陥っている思考の愚かさ、不幸、恐怖の数々を

    あますことなく暴露し、われわれにその過ちを伝えているのである。
     



  紀野一義『遍歴放浪の世界』 NHKブックス 67/7. 750円(古本)

       遍歴放浪の世界


     こういう漂泊放浪に生きた人をあつめた本をずっと探し回っていたのだが、

    残念ながらこの本からはなにかを得られたとは言い難い。

     この本で漂泊者の列伝として並べられた者は、高村光太郎、

    空也、西行、一遍、芭蕉、円空、木喰、尾崎放哉、種田山頭火といった人たちだ。





  鎌田茂雄『己れに克つ生き方 「迷い」を断ち切る先哲のことば
             PHP文庫 85/12. 500円(古本)

       


     この本のなかでいちばん感銘したところは、「自由とか自在というのは、

    心が対象にとらわれないことをいいます」というところである。

     「どんなことであれ、心がとどまってしまった場合、そこには自由はありません。

    心がとどまると、そこに意識が集中し、他は脱けがらになります」

     「敵のからだのはたらきに心を置けば、敵のからだのはたらきに心を取られます。

    敵の太刀に心を置けば、その太刀に心を取られます。……どのようにしても結局、

    心の置き所はないのです。」

     「心をどこにも置かないというと、心はどこにもないように思われますが、

    心は全身一杯に満ちあふれていなければなりません。合気道などでは、

    心というよりも「気」といったほうがよく、気が全身に遍満していることが、

    心を置かないということになるのです」





  高橋義夫『知恵ある人は山奥に住む』 集英社文庫 95/5. 500円


     現代の田舎暮らしはどんなものだろうかとのぞいてみたが、

    中世の僧侶のように脱俗と隠遁とかの趣はこの作者にはまったくないようだった。

     とりあえず読んでみただけ。




  鎌田茂雄『こころの達人』 NHKライブラリー 93/12. 910円

        


     いま、仏教や日本の先人たちの癒しや生き方になんとなく魅かれるので、

    一遍や沢庵、武蔵、千利休、世阿弥の生き方を紹介したこの本を手にとった。

     ちょっとわたしの求めているものと違ったが、よい言葉もいくつかあった。

     心というものは実はなにもないということや、思うまいと思うことはすでに思っている、

    体を楽しませれば心は苦しむ、食えなければ死ねばいいだけじゃないか、

    というような仏教系の言葉が心にひっかかってきた。




  中野孝次=編『清貧の生き方』 ちくま文庫 93/8. 567円

       


     『清貧の思想』大反響のために編まれたアンソロジーだが、

    『清貧の思想』自体が良著紹介と人物紹介の優れたアンソロジーになっているから、

    この本はそれでも足りない人のための清貧思想の足がかりになるのだろう。

     金儲けだけで品位や品格を見失った現代日本人には、高潔な生き方をめざした

    この国の人たちの系譜をもういちど省みる必要があると思うのだが、

    そういう生き方のモデルを書店で探そうとしても一苦労だ。




  小野沢実『山頭火とともに 句と人生の観照 ちくま文庫 73/81. 760円

       


     いま仕事にかなり拘束されているので、漂泊の人生を送った種田山頭火の

    生き方に強烈に焦がれる。

     ただわたしには俳句を味わう素養まではなくて、こういう漂泊と行乞の生き方を

    した人がじっさいにいたのだ、その人がどのように感じ、どのようなことを考えていたのか、

    そういった漂泊人生の中での想いの片鱗さえ触れられれば、せめての救いにもなる。

     世俗や地位を捨てて漂泊に生きる人生もあるのだということを知っておくことは、

    サラリーマン社会の綱渡りから落ちれば破滅と思っている人には救いになるかもしれない。

     世俗や一般的な生活から転落した人生は命の終わりではなく、

    逆にそこから自由や喜びがひろがる新しい境地であるかもしれないのだ。

     サラリーマン社会の破滅地点からの喜びや幸福を山頭火は垣間見させてくれる。




  吉田兼好『徒然草』 角川文庫ソフィアほか 1331年ころ執筆? 660円

       


     世俗や名声、財産への批判という点では、ショーペンハウアーとか

    マルクス・アウレーリウスなども同じようなことをいっているからあまり新鮮味はなかった。

     人間にとって最高の宝は財産でも名声でも地位でもなく、死の逸れがたいことを

    日々自覚して、生きて今あることを楽しむということだけだ、というのは究極の言葉だ。

     死からものごとを捉えること、わたしはあまりにも恐ろしいのでそれを捨ててしまったが、

    そのぶん人生の楽しみや感謝が感じられなく、茫漠とした人生となってしまうのだろう。




  中野孝次『清貧の思想』 文春文庫 92/9. 485円 

        


     人生観を揺さぶられるすばらしい本である。

     金儲けやビジネスだけの卑しい日本人ばかりになったこの国でも、

    かつては世俗や財産、名誉、地位を捨てて、あえて持たないことで

    心の自由や優雅、高潔さをめざした尊敬できる人たちがたくさんいたことを

    教えてくれる本である。

     鴨長明や良寛、蕪村、芭蕉、吉田兼好、西行といった人たちの生き方が紹介されている。

     かつての日本人にはそういった高尚な理想があったのに、

    現代人はなぜそのような系譜をすっかりと忘れ去ってしまったのだろうか。

     企業やテレビ、雑誌などの圧倒的な影響力(強制力)を無視できないだろう。

     この本は刊行当時ベストセラーとなったが、その当時わたしはヨーロッパかぶれで、

    日本の古文ばかり出てくる本には手が出せなかったのだが、

    最近とみに忙しくてその飢餓感が逆にこの本を手にとらせた。

     今までこの本の中身まで知らなかったことは残念なことだったと思う。




  竹内靖雄『「日本の終わり 日本型社会主義との訣別 
           日本経済新聞社 98/5. 1600円

        


     閉塞日本社会の総決算のようなよい本である。

     とくに年金制度や医療保険はもうダメだとあっさりと切ってくれたことはありがたい。

     著者は、福祉国家は家族を無用化するという人々の「意識革命」をなしとげたことが、

    とり返しのつかないことだとみる。

     「国家になんでもかんでも甘えん坊」になった人々の行く末は、

    国家といっしょに沈没するまでみずからの依存体質のなさけなさに気がつかないのだろう。

     この本の著者は自由市場主義者であるようだが、日本型社会主義のかずかずの破綻の

    理由づけにはおおいに肯けるのだが、自由主義者ゆえの説明には感心しない。

     わたしも市場主義にしたほうがいいと思うが、なぜなら決まりきった人生コース、

    生涯を拘束される会社人生や会社至上主義は官僚型社会主義にその原因があるからだと

    思うし、市場主義にもどせば逆に金儲けだけではない価値観も生まれると予想しているからだ。

     個人の自由な生き方や生活までも拘束する日本型社会主義はもう終わるべきだし、

    その前にまず人々はこの国はみんなでいっしょに仲良くの「社会主義」だったことに

    気づかなければならない。

     そのためにものすごく窮屈で強制的な集団主義(会社主義)が人々を覆っていたのである。

     青年期に感じる将来にわたる重圧感はこれをなくさなければ拭い去れない。    




  ビル・トッテン『日本はアメリカの属国ではない』 ゴマブックス 97. 571円

       


     金持ちが都合の良い世界観や常識をつくっているという、

    社会主義的イデオロギーからではない視点が意外に新鮮だった。

     かつてはロックフェラーやモルガンといった大富豪たちの思惑が帝国主義をそそのかし、

    現代では金持ちがメディアを使って都合の良い情報を流しているのではないだろうか。

     アメリカの景気はよくなったというが、一部の人間だけが儲かっているのであり、

    管理者をのぞく平均賃金は5万円程度(一ドル110円)にすぎないという。

     しかも現代の金持ちたちには社会的利益にたいする高貴な責任感は皆無だ。

     金持ちは許せないとマルクス的階級観に卑屈になることはないと思うが、

    かれらの世界観や都合の良いものの見方をうのみにするのは警戒したい。    




  入谷敏男『権力はいかにしてつくられるか』 新潮選書 93/6. 1100円

       


     読みはじめたころはひさびさに心理的な分析が読めるということで期待したが、

    たぶん「権力者=政治家」の構図で読みとくような本だったので、

    日常の社会的な権力構造まで踏み込んでいなかったのであまりおもしろくなかった。

     わたしには政治の権力はあまりにも遠いものであり、キョーミもナシ、

    会社や学校という狭い世界でしか生きていないのでそこらへんの権力分析を

    おおいにしてもらったら、もっと楽しめたと思う。




  堀紘一『成功する頭の使い方 スーパー洞察力のすすめ PHP文庫 96/7. 495円

       


     地価が三分の一、物価が三割、円が一ドル220円まで下がる、

    失業率は2倍の7%になる、考えることのススメなど、まあそれなりに楽しいし、

    おもしろい本だが、それ以上の感銘は得られない。

     「あらゆる学問や人生は、何が問題であるかを考えることだ」――これは名言だ。




  ピーター・ミルワールド『素朴と無垢の精神史 ヨーロッパの心をもとめて
             講談社現代新書 93/12. 600円

       


     この本は富や贅沢に背を向けた西洋のシンプリシティの系譜をたどるという

    興味のひかれるものだと思ったが、わたしが期待したような自然の癒しとか、

    持たないこと、かれらの生き方といったものを具体的にのべていたわけではないので、

    かなり期待外れの、なにを語っていたのか意味不明の記憶だけが残った本だった。    




  堺屋太一『「大変」な時代 常識破壊と大競争 講談社文庫 95/9. 495円

       


     世界構造と国際秩序の大きく変わる大転換期なのに、

    日本人にはそれほど大きな変革の実感がない。

     かつての日本は明治維新と太平洋戦争の後の変革では失敗したがゆえに

    世界の流れに沿うことができたが、第一次大戦の後には成功したがゆえに

    世界の変化に鈍感になり、成功体験をくりかえして敗戦という悲劇をむかえた。

     現在も世界的な大競争時代に突入したのにその変貌にまるで無自覚だ。

     勝利のむずかしさは、次の目標を自ら創造することであると堺屋太一はいう。

     ほかに、周囲の目より自分自身の楽しさに自信をもつ「自尊」の精神のススメは

    わたしもまったく同感である。

     この本は刊行当時ベストセラーとなったが、また同じような内容かなと買いそびれて、

    文庫本になってあらためて読んでみたが、やっぱり楽しめる。




  田尾雅夫『会社人間はどこへいく――逆風下の日本的経営のなかで
               中公新書 98/7. 660円

       


     「会社人間」とタイトルがつけば、読まないわけにはいかないが、

    この本は会社人間の肯定できる側面をもちあげようとしていて、

    かなり不満がのこったし物足りなかった。

     「会社人間」の束縛から脱出する道を提示してくれて、

    これからの人間らしい生き方を指し示してくれれば、もっとおもしろかったと思う。

     とりあえずは「会社人間」を学術的なテーマにとりあげたことはうれしい兆しだ。





     ご意見お待ちしております。    ues@leo.interq.or.jp



    1998年夏に読んだ本 日本論や保守主義、ビジネス関係とかいろいろ読んでます。

    1998年冬に読んだ本 東洋的心の平穏、中国人の達観などがテーマです。

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