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 ■060703書評集


 ■HTMLってなんなのだろう。             2006/7/3

 『オールカラー HTMLポケットリファレンス』 シーズ
 技術評論社 1997 1580e

 


 ほとんど読みたいとは思わない本だな。

 私はHPを9年ほどつくっているが、HTMLはまったく知らない。ホームページ・ビルダーでつくっているから、なにひとつ知らなくていいのだ。ブログをつくるようになって、たまにHTMLが必要になったから、ようやくHTMLはどのようなものかとこの本を手にとったが、まったく見る気がしない。必要なときだけひもとく本だ。

 それにしてもHTMLというものでよく指示ができたり、デザインができたりするものだと思う。どういうしくみになっているのかと不思議に思う。私にとってはほとんど魔法の世界だ。

 願わくばできるだけこのHTMLはつかわないですませたいが、知っていたほうがデザインや指示を自由にできるのだが、どうもこの世界をおぼえたいという気にはならない。困ったときにはこの本は一ページごとに項目がつくられていて、なにかの役に立つことがあるかもしれない。





 ■代償のない福祉などない。             2006/7/8

 『社会福祉思想史入門』 吉田久一 岡田英巳子
 勁草書房 2000/7 2800e

 


 私がこの本を読んだのは福祉を肯定するためではなくて、福祉国家が生まれた背景を批判的にくみとる意図からである。福祉国家はあまりにも私たちの生き方を拘束し、福祉の代償に多くの犠牲をはらう人生を歩ませているのではないかという思いからである。

 年金や健康保険があるために私たちは企業や政府に弱みを握られたように隷属しなければならなくなったし、生き方の冒険や選択は狭められたし、また家族や夫婦、親族などの扶助の絆を破壊してきたのではないか。福祉を得る代償に転倒した人生をわれわれは歩んでいるのではないだろうか。

 トクヴィルははやくも1835年にそのことに警告を発していた。「……しかしそれとは反対に、人間をどこまでも幼児の状態につないでおこうとするのである。……政府はよろこんで市民の福祉に奉仕するが、そのためにあくまでも政府だけが作業し判断することを要求する。政府は市民の安全を配慮し、彼らの欲求を予見して必需品を確保し、彼らだけの娯楽を奨励し、彼らの用件を指導し仕事を管理し、相続を規制し遺産を分配する。政府は市民たちから、思考することの負担と生活することの苦労をすっかり免除してやれないものか、と考えている」

 疾病や障害、老後の生活不安からの解放を約束する福祉国家は夢のような約束であるのはまちがいない。だからこそ逆に私たちは人生の多くを代償に支払わなければならないのである。

 そぼくに考えても生涯を保障されるということは、それだけの代償を政府や企業なりに支払わなければならない。つまり生涯や生命を支払わないで、だれが無償で生涯を保障してくれるというのだろう。国民国家や総力戦体制から福祉国家がうまれた因果関係は緊密である理由がわかるというものである。政府や企業は生涯を保障してくれるが、ぎゃくに私たちも生涯を彼らに捧げなければならないのである。それは自由な人生、自分の意志で人生を切り開く権利を奪っていないだろうか。

 中世以前の慈善は神にいたる道であった。しかし十四世紀半ばにペストの流行と労働力不足により貧困観の転換がおこる。浮浪者や乞食は労働能力を基準に振り分けられることになったのである。そして豊かであるはずのイギリス都市に貧困が発見され、福祉思想は拡大することになる。国民国家創出のために生活に困らない全国民も福祉の対象にふくまれてゆくことになる。つまり生活保護が国民全体に拡大されたばかりか、その権利がステータスや社会保証になるという転倒した考え方が支配するようになったのである。

 この本を読んだ大ざっぱな感想としては、福祉思想の歴史から光をあてると、政治思想も違った面が見えてくるということである。福祉は政治思想でもある。もうひとつ思ったことは教科書的な本は、だいたんな一面的解釈を断行して、ほかの解釈を排除する勇敢さに私は思わずたじろぐところもあった。

 だいたいは福祉の歴史をみることにより福祉国家の行く末を見ようということでこの本を読んだことになるのだろうけど、もちろん私にはそんな力量はない。それにしても福祉のない時代より全国民が福祉の対象にされる時代に生まれたことは幸福なことだろうけど、ぎゃくにそのシートベルトにトゲがあるようでは皮肉というしかない。





 ■金儲けと学歴                      2006/7/15

 『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』 トマス・J・スタンリー
 日本経済新聞社 2000 1600e

 


 このような金持ち本を読んだのは、金儲けの罪悪感を考えてみたくなったことと、お金にまつわるいろいろなことを考えたくなったこと、やはり金持ちはなぜ金持ちになれたのかという興味からである。

 私には金儲けは汚いことだ、成功をめざさないという価値観がある。いったら、人生を否定的に生きろということだ。これはこれでいいと思うのだが、金持ちにも幸福や人生の充実の要素があるのなら、この価値観のベクトルにも学ぶものがあるというものだ。

 金儲けはなぜ悪いことに考えられるのか、日本人はお金をどのように考えているのか、といったことをこのような金持ち本から逆にその価値観をうきぼりにできると思ったのだが、まあ、その点ではこの本はあまり役に立ったとはいえない。

 この本の中で「金持ち・秀才は金持ちになれない」という章が重要ではないかと思った。私も学歴と金儲けの価値観はまったく違うと思っているのだが、日本ではどうも学歴と金持ちが直結してしまっている。よい学歴をもてば、いい会社に入っていい生活ができると思われているが、学歴というのは教えられたことを記憶するだけであり、金儲けのようにお客のニーズを創造して儲けるという活動とまったく違っている。

 日本人は「アカデミック・ステータス」を立派にすることより、ほんらいの金持ちになるという目的をリセットしなおす方がいいんではないかと思う。どうも日本人は目的をまちがっている。キャッチアップの工業社会では教科書どおりの生産が功を奏したり、学歴を組織の序列におくのは理にかなったかもしれないが、もう新しい時代のこの方法が合わないのはいうまでもない。金持ちになるという目的が、学歴と離れたかたちで、立てられる必要があると思う。金儲けの成功はもちろん学歴で序列づけられるわけなどない。

 この本の統計にあらわれた金持ちというのは特徴として、自営業者やニッチ(すきま)産業で成功した人が多いということである。競争が多いところははじめからめざしていない。そしてハリウッド映画のような豪遊したり、豪邸に住む金持もちなのではなくて、服や家具は修繕するし、楽しみは子どもや孫、友人たちとの交流、資産運用の計画などの金のかからない活動だったりする。浪費型の金持ちとは分けられるものである。

 さいごにこの本の中から金持ちになる秘訣をいくつかピックアップ。
 「一代でどうやって億万長者になったかですって? 私たちの多くが、人が目を向けないようなところでビジネスチャンスを見つけているんですよ」
 「私たちは、根強い需要がある製品やサービスをほぼ独占的に提供しているから金持ちになれたのです。競争相手が目白押しの分野に参入したりしません」
 「本書の内容の多くはこの「人とちがうことは利益をもたらす」というテーマを軸にして展開していく」
 「ぼくは、ぼくは、ぼくはって、自分のことばっかり考えている子は鼻つまみよ。言い換えれば、相手が何に興味を示し、何を求めているかに、常に注意を払いなさいと言い聞かせたのである」
 「往々にして、成功するということは、仲間外れになる犠牲が伴う。現に、億万長者の四人に一人(76%)は、人格形成期に周囲とはちがった見方をすることを学んでいる。……人とちがうことは経済的成功という褒章をもたらすが、批判や仲間外れといった報いも受けるのである。……人に拒絶されても、絶対に自分個人を拒絶されたと思わないこと」
 「基準や体制、権威といったものに対して疑問を抱くことは、自力で億万長者になった人たちに共通して見られる特徴である。……いつも「できる子」の列に入れられていた生徒たちはどうだろう。……こうした人たちは、自分を「できない子」の列に入れようとする権威者と戦った経験がない」
 「ミリオネア・マインドを持っていたのは、じつは、出来の悪かった教え子たちのほうなのである。……最大で最悪のリスク、真に危険なリスクは、他人に自分の人生のコントロールを許してしまうことだ、ということである」





 ■たしかにユダヤ人はすごい。            2006/7/19

 『ユダヤ人ばかりになぜ、お金が集まってくるのか』 伊達一啓
 サンマーク出版 2006/6 1300e

 


 たしかにユダヤ人のメンバーはすごい。エジソン、アインシュタイン、マルクス、フロイト、スピルバーグ、ピカソ、ロックフェラーほかたくさん。ユダヤ系企業にかんしては、ワシントンポスト、コカ・コーラ、IBM、マイクロソフト、マクドナルド、ロスチャイルド財閥、GE、GMともっと多くの企業がある。

 なんでこんなにユダヤ人は世界に突出した存在になったのだろうか。資質か、考え方か、タルムードという経典のせいか、それとも苦難と困難の歴史か。どうやらユダヤ人に学ぶことは現代の成功条件を学ぶことでもあるらしい。

 この本は三笠書房の知的生きかた文庫の自己啓発の本に似ている。こまぎれな章のタイトルを読むだけでもじゅうぶんエッセンスが得られる。

 私は自己啓発は嫌いではない。二十代までを思いっきりネガティヴな思考で生きてきたから、前向きな思考のあたたかみや必要性はじゅうぶんにあると思っている。ネガティヴさは自分を傷つけているだけなのだが、かといって、前向き思考を押しつけられるのをたいそう嫌う人もたくさんいるので、そういう人はネガティヴさがどんな損失をもたらすかを実感したときにこの志向を学びとればいいと思う。もちろん健全な懐疑心も忘れてはならない。

 日本人は「謙譲の美徳」や控えめで謙虚に生きるのがよいとされており、「日々の暮らしが成り立てばいい」と考えたりするが、ユダヤ人は金しか頼るもののない困難の時代を長く生きてきたのだから、そういう現実無視の言葉を信用しない。それだけにお金に執着したり、ライバルを叩き潰したり、成功や金への渇望を肯定したりするのだろう。日本人は謙虚に生きていたら世間は生かさせてくれると思っており、それがぎゃくに自分の人生の破損に貢献するのだろう。

 感銘した言葉をいくつか引用。
 「自信喪失者は、自分に対して盗みを働いているようなものだ。自分の可能性がどんどん失われてゆく」
 「学問を身につけることによって人生の危険や困難と闘えると考える」
 「成功を妨げているものは何だと思う? それは人間の感情だ。つまらねぇ面子とか情けとか、意地とか妬みとか、そういうものだ。そういうくだらねぇ感情が、成功を、また目の前の大きな利益をブチ壊しているんだよ……」
 「成功者のほとんどは、他人の利益に興味をもち、他人の利益を考えられるタイプの人間であった」
 「人間は東西を問わず見栄という水にすむ魚だ。……そこで人を動かすにあたってはその人の自己愛に訴えるのが有効である。それに人が欲することを行うのは親切心でもある」
 「タルムードは『人が死んで神に直面するとき、神はせっかく人に与えた様々な楽しみを避けたものを嫌う』といっている」

 ユダヤ人の成功を探るために『タルムード』もしくはラビ・トケイヤーの『ユダヤ格言集』、またはイザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』を読んでみたくなった。

 




 ■お金とは人の喜びのことである。         2006/7/25

 『マーフィー みるみるお金持ちになる法則』 植西聰
 成美文庫 2001/6 505e

 


 すばらしい本。金持ちとはなにかと教えてくれる本。金持ちとは人に多く喜びを与えた人なのである。お金は人に喜びを多く与えた人に集まってくる。

 金儲けとは人間関係そのものだと思った。自分のことばかり守ろうと思っている人はお金にも人にも嫌われるが、人に多くの喜びを与えられる人はしぜんにお金も人も寄ってくる。お金は人の喜びや利他行為の貯蔵庫のようなものなのである。

 たぶんにお金は汚い、金儲けは悪いことだと思っている人は、自分の利益を一人占めにしようとし、そして人の喜びや楽しみも自分のために奪いとろうとしてしまうのだろう。お金は奪いとるものだと映る人には、自分の奪いとる姿勢を他人に見ているに過ぎないのだ。他人とは自分の鏡である。

 「人は誰でも人に喜びを与えている限りその分だけ財産を持っていることを忘れてはなりません」

 マーフィーは「他人を敬える人が豊かになれる」という。
 「他人を愉快な気持ちにさせたければ、他人を敬いなさい。同時に愛と善意を与えなさい。これさえ守れば、人はあなたを放っておけなくなります」

 「誰でも心の中にもっとも深く根ざしている願望は、自分の存在感を認めてもらいたいということです。他人の存在感を認めなさい。そうすればあなたも認めてもらえます」

 「人は自分の関心事に反応を示されると大きな喜びを感じます。それは自分の価値が他人から評価されたことになるからです」

 そして「喜びを与えよ! されば与えられん!」という。
 「他人に喜びを与えることに快感を感じた瞬間、お金はあらゆる角度からあなたへと流れてくるようなります」

 「お金を殖やすコツは一人占めの発想から脱却することです。人のためになることを目指す時、あなたの富は大きくなっていきます」

 「人のために尽くすことが自分が富むことに通じる」という。

 また「自分が困っている時こそ相手に尽くそう」という。私たちはそういうときこそ人助けなんかとんでもないと思うだろうが、「自分自身の問題が解決していることに気づくでしょう」というのである。

 「人間とは、その人が一日中考えていることであり、人の一生とは、その人が人生をいかに考えたかです」

 これらのマーフィーの考察からお金とはなにかと見えてくる。お金とは人の喜びをめざしてぐるぐる回るものなのである。利他行為プラスそのうえにさらに喜びが必要なのである。

 私たちは仕事はしんどい、つらい、サボリたい、すこしでもラクしたいと思いがちだが、こういう姿勢では人に喜びを与えられないばかりか、ときには不快感や損失感さえ人に抱かせてしまうだろう。自分の疲労や損失ばかり考えているからである。そしてお金は集まらなく、貧乏になってしまう。他人に喜びを与える快感を悟ったときに、はじめて私たちは仕事の本質を知り、そして仕事の評価やお金も集まるようになるのだろう。

 お金とは利他行為や人の喜びの集積である。社会はよくもこんな喜びの財貨というしくみをつくったものである。そのおかげで文明は発達し、社会は快適に便利になった。社会は利他行為に喜びを感じた人に評価とお金を与えるのである。

 「人の喜びは自分の喜び」という思いを仕事に結実させたときに、私たちはお金に困らない秘訣を手に入れるのだろう。お金や仕事というのは、じつに社会や共同体によくできたしくみだ。感嘆するしかない。利他行為のポイント表みたいなものである。お金持ちとは利他行為の表彰者なのである。





 ■成功哲学である。                2006/7/29

 『大富豪になる人の小さな習慣術』 ブライアン・トレーシー
 徳間書店 2004 1500e

 


 富豪になるための本というよりか、成功哲学のエッセンスを集めてきたような本だな。

 「あなたの現在、そして未来は、すべてあなた次第。現在あるあなたは、これまでに通過してきた選択、決断、行動の積み重ねだ。生きかたを変えれば、未来は変えられる。あなたがなりたい人物像、あなたが達成したい目標に、より近づけるような選択、決断をすればいい」

 ということでお金持ちになりたいのなら、お金持ちと同じ考えかた、同じ感じかた、同じ行動を心がければいいということだ。単なる法則であるという。「ひとつの行動をくり返すうち、人は奴隷となる。最初は自分で選んだはずが、いつの間にか従属しているのである」。だからよい習慣を選択すればいいという。

 「世の成功者は、成功を――前もって期待する。幸せな人は、幸せを期待する。人気者は、他人から好かれるのを期待する。彼らはみな、どんな場面でも何かいいことが起こると期待する習慣を身につけている」

 「固定観念によって事実が生み出される。つまるところ、あなたは見たものを信じるのではなく、心の中で信じるものを見るのだ。
 固定観念のなかでもっともやっかいなのが「自己制限」の固定観念。それが強まると、あなたはたえず自分を「安く見積もる」ようになる。目標をかかげても早々にあきらめ、さらには周囲の人間に、自分にはこれこれの素質や能力が欠けていると話すようになる。ここにいたって、思い込みは現実へと変わる」

 「対応の法則。外界は、内面を写す鏡である。ちょうど、三六〇度を鏡で囲まれているようなものだ。どちらを向いても、映るのは自分の姿。あなたが他人に見せるのと同じ態度を、他人もあなたに見せる。肉体に関するあなたの考えかたが、健康習慣や外見に反映される。人間関係に関する考えかたが、友人や家族とのつき合いかたに反映される。成功や富に関する考えかたは、仕事や物質面での収穫に反映される。心の奥底にひそむ考えが、そのまま表われているのだ」

 ということでこの本ではお金持ちの習慣をマスターするようなプログラムが組まれているわけだ。いまいちな本だった気もするが、自己啓発の前向きな言葉のシャワーはすこしでも浴びたほうが得というものである。著者のいうとおり、自分の考えかたが、自分や人生を決めるのだから。

 さいごに「他人とうまくつき合うための習慣」の章から。
 「自尊心を満足させ、ひとかどの人物として扱ってくれる人の言動に、自己愛と誇りをかきたてられ、幸せな気分になれる。あなたの務めは、話し相手に、価値あるたいせつな人物だという自覚を与える「対人関係のエキスパート」になることだ。あなたはどこへ行っても歓迎されるだろう。みなに敬愛され、とりまかれるだろう」

 「不幸というものは、大部分が、過去のネガティブな体験を乗り越えられないところからきている。まるで炎に薪をくべるように、大事に燃やし続けているのだ」。だから赦して水に流すことがたいせつであるという。

 「ぼくは絶対に恨みを抱え込まないんだ。だって、こっちが恨みを抱いているというのに、あっちは踊っているんだよ!」。この対象も赦すことが重要なのである。

 「四番目に赦すのは、あなた自身だ。過去の意地悪な行為、無意味な行為、浅はかな行為、馬鹿げた行為、残酷な行為について、自分を責め続ける人がいかに多いことか。自分自身を赦して、過去を水に流そう」





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