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■040321書評集
 ひたすら読む女の小説



 2004/3/21

 『レンタル(不倫)』 姫野カオルコ
 角川文庫 1996 552e(古本)

 ポルノ作家で三十代で処女という設定はおもしろいと思ったが、この著者のめざしていてるぶっとぶ具合のおもしろさと、私がいま読みたいと思っているストレートな恋愛小説とはかなりミスマッチだった。




 『恋愛中毒』 山本文緒
 角川文庫 1998 571e(古本)

 冷静で客観的な女性が主人公なのに、タレント作家の愛人になったり、犯罪を犯したりと、このつながりがどうも私には理解しがたいことだった。女はこと恋愛になると狂気になるということなのか。




 『girl』 桜井亜美
 幻冬舎 1997 495e(古本)

 テレクラ、援助交際、オヤジ狩りといった流行の言葉をまぜてつくった物語で、こういうつくり方はもういいやという感じがする。




 『雪を待つ八月』 狗飼恭子
 幻冬舎文庫 1999 457e(古本)

 ほう、著者は1974年生まれ。かなり若い作家が出てきているんだなと思った。それにしても狗飼とはすごい名前ですね。物語は同棲していた彼と別れるまでの話で、物語というよりか、切ない感情を詩にしたような感じだな。




 『熱』 高樹のぶ子
 文春文庫 1994 419e(古本)

 なんでしょうね、浮気で別れた夫とまだ関係がつづいているという話ですが、その性がじっとりと叙述されているのですが、これは文学なのか、性についての考察書なのか私にはよくわかりません。




 『イブの憂鬱』 唯川恵
  集英社文庫 1996 457e(古本)

 29歳から30歳へのはざまにゆれる女性を描いた小説で、やっぱりいまでも30歳は女性にとって大きな区切りなんでしょうね。結婚しない劣位にみられる恐れと、自由と束縛されたくない気持ちがせめぎあって、たいへんなのでしょうね。でも30ってたんなる数字の上の区切りにしか過ぎないのに。




 『僕らの広大なさびしさ』 谷村志穂
 幻冬舎文庫 1995 419e(古本)

 タイトルがいい。中身はほとんど忘れた。野球をやめた大学講師と母を捨てた女子高生の話だった。




 『愛には少し足りない』 唯川恵
 幻冬舎文庫 1994 495e(古本)

 唯川恵の性をあつかった小説である。ふつうの安定した結婚を夢見る女性と、性に奔放な女性の比較が物語の中心である。主人公はさいごには少し冒険するが、もちろん結婚の道はふみはずさない。




 『こんなにもひとりぽっち』 島村洋子
 角川文庫 1995 476e(古本)

 語り手が変わってゆき、それぞれ相手がどう思っているかが語られ、うまいつくりだなと思った。人が違えば、同じところを見ていても、考え方・感じ方はかなり変わってくる。そういう妙を味わえる作品です。




 『ヴァージン・ビューティ』 斉藤綾子
 新潮文庫 1996 400e(古本)

 あからさまな性の表現者である斉藤綾子だが、なんだかこの短編集では小説としてめざすものが混乱しているように思われた。




 『L文学完全読本』 斎藤美奈子
 マガジンハウス 2002 1300e

 女性の作家の活躍がめだってきたが、斎藤美奈子はそれらを広告代理店的に「L文学」と名づけた。『赤毛のアン』、コバルト文庫で育った女性たちが大人の等身大の女性を描き、読むようになった。ドラマやポップミュージックの女性マーケットが小説にもおよんできたということである。山本文緒や江國香織、唯川恵などがメインになるのかな。この本はそのブックガイドになる。




 『冷静と情熱のあいだ』 江國香織
 角川文庫 1999 457e(古本)

 むかしの彼が忘れられないために三年もつきあった彼を捨てるのはあまりにもひどいじゃないかと思った。十年ぶりの出会いには泣けた。男の側からの気持ちを描いた辻仁成の本も読みたいと思ったのだが、果たせず。




 『こんなにも恋はせつない』 唯川恵選
 光文社文庫 2004 571e(古本)

 江國香織、高樹のぶ子、藤堂志津子、林真理子、山田詠美などの恋愛小説アンソロジーである。

 川上弘美の『物語が、始まる』にはびっくりした。雛形という人形ともロボットともつかない存在が当たり前のように物語に出てきて、とまどいながらも読まされる絶妙な作品で、これはなんなのだろうかと思った。




 『彼のバターナイフ』 内田春菊
 角川文庫 1996 552e(古本)

 セックスにまつわる4コママンガ。




 『13のエロチカ』 坂東眞砂子
 角川文庫 2000 514e(古本)

 けっこういい感じのするエロスの短編集である。卑猥でも猥雑でもない。高質で落ち着いたエロスが味わえる。体の快楽に目覚めた少女やはじめ ての性の体験などがつづられており、いい感じである。




 『蛇を踏む』 川上弘美
 文春文庫 1996 390e(古本)

 短編『物語が、始まる』を読んでからこの川上弘美に興味をもって読んだのだが、かなりわからんと思った。物語に出てくる蛇がなにを象徴しているのかもわからず、混乱するばかりだった。『蛇を踏む』はどうして芥川賞をとったのかもよくわからない。安部公房をめざしているのだろうか。




 『溺レる』 川上弘美
 文春文庫 1999 400e(古本)

 先に読んだ本よりこちらのほうがよほどわかるが、とぼけた感じは同じである。不思議な感じがする短編ぱかりである。




 『エロティシズム』 ジョルジュ・バタイユ
 ちくま学芸文庫 1957 1500e

 死や性、暴力の禁止が労働の世界をつくりだす、たしかバタイユはそこんなことをいっていたと思うが、この文章はひじょうに読み取りにくいものである。もっとそのことについて知りたいと思ってこの本を読んだのに明快な理解は得られなかった。




 『まどろむ夜のUFO』 角田光代
 講談社文庫 1996 552e(古本) 

 角田光代は大学を出たり結婚して出産したりといったなぜか「ふつう」になれない人たちを描くのがうまいらしいが、彼女の生まれは私と同じ1967年で、この世代あたりからこれまでの「ふつう」や「あたりまえ」とされていたことができない、もしくはしたくないといった人たちが増えていったと思う。「ふつう」がどんどん崩壊してゆくのである。




 『ヴァンサンカンまでに』 乃南アサ
 幻冬舎文庫 1991 533e(古本)

 サスペンスでハードボイルドな女性が出てくると身構えていたら、ふつうのちょっとなけさないくらいの好感がもてる女性が出てくる。等身大の女性の話である。




 『彼女たちのエロチカ』 スージー・ブライト編
 集英社文庫 1988 552e

 女性の描いた官能の短編集ということだが、ほとんど欲望が思い通りになるポルノまがいのものが多かった。欲望がかないすぎるのがポルノで、かなわないのが文学や物語だといえるかもしれない。





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冷静と情熱のあいだ―Rosso




こんなにも恋はせつない






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13のエロチカ




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