■030817書評集
(のつもり)
『日本エロ写真史』 下川耿史
ちくま文庫 1995 780e(古本)
なんのためになるのかよくわからないが、日本のエロ写真の歴史をたどった本である。貧相であまりエロティックでもないむかしの日本女性の裸体がおがめる。ここからエロスのありかたを読み解くべきなのだろうが。
『エロスの解剖』 澁澤龍彦
河出文庫 1965 480e(古本)
西洋神秘的な性の解剖がおこなわれているが、私は明快な社会学的分析が読みたいだけである。
『かなりHな心理学』 博学こだわり倶楽部[編]
KAWADE夢文庫 2002 476e(古本)
口説き方、オトし方の本でいろいろな本から編集されているからおトクだが、まあ実践のときはたいがい忘れていることだろう。
『AV女優』 永沢光雄
文春文庫 1999 800e
AV女優のエッチな話が聞けると思ったらオオマチガイで、生育歴とか家庭環境とかなまなましい人生のオンパレードである。私も自分の小学生とか家庭のことをずいぶんと思い出した。
とんでもない人生を送っている女性も数名いて驚いたり、人生って人によってはものすごく違うんだなと思ったり、でもまあふつうの女の子がほとんどである。これはライフ・ヒストリーの本で、ふつうの人生なら読まれもしないだろうがAV女優だから注目の栄光に浴しているわけだ。
『みちのく よばい物語』 生出泰一
光文社知恵の森文庫 2002 590e(古本)
民俗学者の赤松啓介の夜這いの話はおもしろかったが、この本はいまいちおもしろくなかったな。
『女たちの私生活』 週刊宝石・編
光文社文庫 1992 440e(古本)
けっこうおもしろい本である。OLの性が明るく、楽しく語られている。エッチ話ってぜんぶ笑いで落とせるのか。
『ウソを見抜く女と結婚したがらない男』 鈴木弘文
竹書房文庫 2000 524e(古本)
男と女の脳の違いをあつかった本が売れているが、同じ系統の本であるが、この本はけっこう読みがいはあった。まあ私は男と女の違いを脳から説明するのはあまり好きでなくて、おおかたは経済と考え方で説明できると思っているけど。
『恋愛45! 紳士・淑女の性愛学』 キム・ミョンガン
小学館文庫 1998 476e(古本)
性の社会学・哲学のようなものを探しているのだが、なかなか見つからず、この本は近いと思ったのだが、なんだか学究的ではないな〜。
若いときに選んだ相手と一生つきあえるわけがないとか家庭はエロスを剥奪するから一夫一婦制はむりがあるとかの話はよかったし、「人に迷惑をかけなければ何をしてもいい」という戦後の人生哲学が純潔思想や結婚命をKOしてしまったのだなどの話はいい。
『恋愛の基礎』 キム・ミョンガン
講談社文庫 1993 533e(古本)
前の本が楽しそうだったのでいっしょに買ったが、イマイチ。ひとこと引用。「セックスというのは本能ではなく、つくづく思想の一種だナと思わざるを得ないのです」
『官能フェチ読本』
別冊宝島386 1998 933e(古本)
フェチとは性行為の手前のモノに欲情するという嗜好であるが、生殖には役にたたないし、目的を誤ったものに発情するというヘンなものである。脳で欲情する人間はフェチたらざるを得ないのかもしれない。
『性のプロトコル』 ヨコタ村上孝之
新曜社 1997 2000e(古本)
なるほどマンガの『みゆき』は男の淑女と娼婦を求める欲望の矛盾したあらわれであり、作者は『ナイン』において淑女型を、『みゆき』では娼婦型を主人公に選ばせたということだ。
また『東京大学物語』では村上は無節操にセックスしまくるのに遥はいつまでたっても処女のまま村上を想いつづける。このようなものこそ、家父長性社会の要請する物語だということだ。
『女と男のだましあい』 デヴィッド・M・バス
草思社 1994 2000e
男と女の百科全書のような本である。男と女の性戦略がきわめて明快にわかる。ただこういう進化論的考え方はキビしすぎるというか、恐ろしすぎるというか、はすっぱというか、利益と利己心のかたまりのような男女を表象させてしまうものである。
読後感がひじょうに悪い。自分のいたならさ、自分の落伍感が先鋭につき刺さってくるし、異性の選別意識が驚異に思えてくる。
また男女の選別意識がひじょうに保守的というか、男女の経済力と依存の関係が永久不変のように考えられているきらいがある。貧乏人の男とフェミニズムの目の仇のようなイデオロギーになりそうである。ああ、貧乏人の私は女は男に財力・資源のみを求めるという記述を少しでもはやく忘れた〜い。
『性と文化の革命』 ヴィルヘルム・ライヒ
勁草書房 1930 960e(古本)
古い本であるが、性的抑圧はいまでも問題だなと思った。ライヒは非難キャンペーンのなかで獄死したということだが、かれの思想の中にそんなに危険なものが含まれていたのか私にはよく判別できなかった。この本は二段組でびっしりと文字が書き込まれており、著述は大部にわたるので意見や感想を整理することは私の手にはおえません。
『女のオカズ』 色川奈緒+深澤真紀
河出書房新社 2003 1500e
男のオカズといえば男同士のあいだでは当たり前の感があるが、女の場合はまだまだそれをあからさまに語られる雰囲気はないと思う。性欲を肯定して、人に開示するということは女性ではまだまだ禁忌があると思う。このような本は女性の性欲をあからさまに開示しているわけだが、女性の旺盛な性欲が社会の共通理解のものになるのはもう近い将来なのか。好色なオヤジみたいな女ばかりの世の中がやってくるのはちょっとオソロシイ。いや、もうそういう時代?
『恋愛について』 中村真一郎編
岩波文庫 1989 520e(古本)
私が読みたかったのはこのアンソロジーのなかにある社会学者、作田啓一の『性の隔離』のようなものである。明治の恋愛と性欲の切りはなしかたや恋愛と情事が階級ヒエラルキーの区別につかわれたこと、恋愛結婚イデオロギーは恋愛の無政府的な力のキバを抜くといったことが語られており、こういう目の醒めるような性分析が読みたいのだが、なぜかあまりない。性の根源はいまはあまり問われることのない古く遅れた話題なのかな。
そのほかの人たちの文章もいろいろおもしろいが、立ち入るのはやめておきます。
『ニュースをみるとバカになる10の理由』 ジョン・サマービル
PHP研究所 1999 1500e(古本)
私もニュースは基本的に嫌いである。もちろんざっとTVニュースくらいは見るが。ニュースって社会の日常とか構造とか深層とかいちばん大事でずっと継続しているものをぜんぜん見れないから、ほんと役に立たないと思う。
それなのにいまの社会はニュースが全世界、全問題と思われているのはかなり深刻だと思う。そのほかにこの本に書かれているとおり、ニュースを知的文化だと思ったり、道徳的になれると思いこんだり、事情通になれると思ったり、変化が毎日起こっていると思い込んだり、ものすごいカンチガイだと思う。ニュースの害悪を知りなさい。
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