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020106書評集
グルジェフ―神秘思想


▼2002/1/6.更新



 『グルジェフとクリシュナムルティ エソテリック心理学入門』 ハリー・ベンジャミン  コスモス・ライブラリー 80. 2000e(古本)

 近年、まれにない感銘をうけた本である。人間は精神と身体のみの存在ではないこと、われわれが自分自身と呼んでいるものはたんに「想像上の私」にすぎないこと、われわれがふだん行なっている自分の価値観をひき上げようとする「内なるおしゃべり」などを、極めて明晰に理解させてくれた。

 とくにわれわれが始終行なっている「内なるおしゃべり」――他人が自分をどう扱ったか、どんな軽んじた扱いや避け方をしたかという頭の中の独り言には、じつに自分自身にも覚えがあり、ひどく感銘した。

 われわれは他人に敬意を与えられるべきだとか、他人は私を好きになるべきだ、われわれは常に幸福であるべきだ、外部の出来事が私の楽しみを妨げるべきではない、などと無意識に思い込んでいる。われわれは自分自身がいつも正しくなければならないのである。それが満たされないと、われわれはたちまち「内なるおしゃべり」をはじめるのである。

 過去の出来事を思い出したり、ぱっとしない世評にたいして言い訳したりする。「内なるおしゃべり」とは自己正当化と自己賛美のキャンペーンなのである。そうすることによって自分自身を最高度の価値評価に保つことができる。想像上の価値観こそがそれ自身なのだから。

 この本はモーリス・ニコルという人の『グルジェフとウスペンスキーの教えに関する心理学的注解』が元になっており、私はこの「内的考慮」「内なるおしゃべり」をもっと知ろうとしてグルジェフの本を読むことになる。




 『グルジェフ・ワーク』 K.R.スピース 平河出版社 76. 1456e

 グルジェフの宇宙論や普通人の心理学、ワークなどが簡明にわかるような本。「同一化」「内的考慮」についてはかなり興味は魅かれたが、グルジェフのだいたいの全貌はわかるようになっているが、それ以上の得るものはなかった。




 『奇蹟を求めて グルジェフの神秘宇宙論』 P.D.ウスペンスキー 平河出版社 49. 2136e

 グルジェフを知るにはまずこのウスペンスキーの著作からということになっている。グルジェフとの出会いやワークの経緯などノンフィクション形態になっており、この本はぶあつく、グルジェフの宇宙論は私にはちっともわからなく、教えはかなり詳細でよかったのだが、読み通すのにちょっと疲れた本だった。私はおもに心理学的なことを知りたいのであり、多くを割かれる宇宙論は私の理解を超えている。オクターヴの法則とか水素論とかなんのこっちゃ。




 『覚醒のメカニズム グルジェフの教えの心理学的解明』 チャールズ・T・タート コスモス・ライブラリー 86. 2700e

 グルジェフの教えの心理学的解明ということで期待はしたのだが、明晰であるのだろうがまわりくどく、思考の経路につきあうのにだいぶ疲れるし、文化の条件づけが私たちとの眠りを誘うなどの指摘にはうるところがあったが、ほかはだいたいグルジェフの教えをなぞっている程度にしか得るものはなかったように思う。

 あとで気づいたのだが、この人はカンペキに知性・論理タイプの人であり、感情的苦しみについての注意や注目がほとんどないので、私には共鳴するところが少なかったのかもしれない。この人は言語・思考の虚構性にあまり重きをおいていないところもあるかもしれない。




 『自己想起 第四の道の教え』 ロバート・E・バートン ダブリュネット 95. 2200e

 「空想と自己同一化」「偽の人格」「複数の私」「苦しみ」「現在に存在する」などの心理学的要素に重点をおいてくれたこの本は私にとってはありがたいことである。断章であり、読みやすいのもいい。「なぜ」より「どのように」自己想起をするかに重点をおいており、いまだに「なぜ」を問いつづける私にはもっと説明や理由がほしくなるのだが、私はこれを捨てなければならないのだろう。グルジェフ用語が周知のこととして語られるところもそうとうあり、少し理解の妨げになったかもしれない。





 『ワーズワス 田園への招待』 出口保夫 講談社+α新書 01/4. 840e

 ワーズワスの自然の詩は心を癒してくれるだろうか。私にはあまり。。。




 『神智学』 ルドルフ・シュタイナー ちくま学芸文庫 04. 1000e

 神秘思想は、人間は身体と精神を超えた存在だという。しかしそれは知覚にも感覚にも知り得ることができないという。ではいったいなにが認識しえるのかと思うのだが、まずは宗教者がめざしてきたその先の世界についてご案内願おう。この本は霊界の案内である。

 この世界は五感に知り得ない世界だから、私にはまったく実感も実在をたしかめることも不可能である。せいぜい仏教的修行には違和感がある部分を見つけられる程度である。あとは沈黙するしかない。

 死後の世界で魂が苦しむのは失った肉体の快楽や欲望を得ることができなくなるからだというのはなかなかコワイ話である。それが満たされないことを知って魂はようやく感覚や知覚から離れ、霊へと向かうそうである。宗教の修行はこの世でそれをめざしていることになる。




 『神秘主義』 ジェフリー・パリンダー 講談社学術文庫 95. 1150e

 世界の神秘主義が紹介されている。概要をのべた本であり、思想の内実をのべたものではないので私にはあまりうるところはなかった。




 『バーソロミュー』  マホロバアート 86. 2300e(古本)

 チャネリングである。怪しいです。「宇宙」や「大いなる叡智」などの頻出するワードはもっと怪しさを増します。でも言っている内容は心理学的にめちゃくちゃ学ぶべきものがあり、この認識は意識や視野の拡大をもたらしてくれるものだと思う。

 瞬間に生きる、怖れから逃げずに見据えること、悪い部分の自分も愛する、想念や感情はそれにとりこまれずに現れては消えるにまかせる、などの私もまったく納得する心理的な知恵がのべられている。これらについては一点の怪しさもまちがいもないと私は思っている。

 「大いなる叡智」や「転生」、「ソウル・メイト」、愛とは肉体がべつの肉体を愛することではなく、自分のあり方そのものだといったことや、人間の精神や肉体は自分という存在のほんの小さな部分であり、宇宙空間にに達するほどの広大無辺な存在であるというところにまで来るとさすがに現代人の知性はここまででとどまろうとするだろう。でもほかの心理学的知恵にはものすごく教えられるところがあるのはまちがいないところだ。怪しさがなかったら、私には手放しの大絶賛の本であるが、「隠れ称賛」の本である。




 『神との対話 宇宙をみつける 自分をみつける』 ニール・ドナルド・ウォルシュ サンマーク出版 95. 1800e(古本)

 アメリカでベストセラーになり、二十か国に翻訳されたそうだが、チャネリングの知恵に興味をもったので読んでみた。自動筆記の本である。この本には心理学的内容が少なかった、あるいはニューエイジ的心理学といったらいいか、それが少なかったので私にはあまり満足するものがなかった。また「神とのやりとり」があまりにも人為的に感じられてきて、これは著者の創作物語ではないかとは思わなくもない。

 「神のプロジェクト」「創世神話」というべきものが紹介されていて、「神」「存在するすべて」はすべてであるがゆえに自分自身を見ることができない、だから全体から一部を切り離すことによって比較対照するもの、霊から自分自身を知り体験するために人間をつくったというくだりがある。宗教でいわれる「真我」というのも自分自身を見ることができず、対象として見られる肉体や精神は自己ではないという教えと共通するものがあることはちょっと驚きである。




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 011202書評集 孤独の肯定 01/12/2.

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『グルジェフとクリシュナムルティ』 ハリー・ベンジャミン コスモス・ライブラリー





















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