010905書評集
☆この一、二ヶ月、暑さと金欠のため、あまり熱心に本を読めませんでした。頭がぼーっとしていたので、すばらしい本も興味をもてずに読み飛ばしてしまったかもしれません。今回の本は深く読み込めたとは言い難いです。
▼2001/9/5更新
『官僚亡国論』 屋山太郎 新潮文庫 90/12. 480e(古本)
「省が問題というのは、そもそも省は各産業を育成、発展させるために誕生したもので、そこに消費者という発想が皆目ないことだ」
「官僚の発想はつまるところ業界益にすぎないのではないか。業界が栄えれば、すなわち国民も潤うというのは殖産興業以来の考え方だ。しかし現状の問題は業界を潤すために国民が踏みつけにされていることである」
この国の経済至上主義は、省庁と官僚独裁によってビルトインされているようだ。企業や業界が国民の上に君臨しつづける構造は、省庁と官僚が手綱をにぎっているのだ。企業中心の社会をかれらがつくっているとするのなら、私の大いなるテキだ。くたばれ。
『「やりたいこと」がわからない人たちへ』 鷲田小彌太 PHP文庫 01/5. 495e(古本)
モラトリアムをつづけてきた私はやりたいことがわからないのではなくて、やりたいことができないときにはどう諦らめや妥協点を見いだすかということに月日を費やしてきたように思う。最近はだいぶ諦める道に馴染んできたが、しっくりくるにはかなり時間がかかった。私は過大な期待や思考法をとき解さなければならなかったのである。
やりたいことがわからない人に向けた本というのは、そうとうの人生経験やじっさいの他人の経験談を知らないと、書けないものであると思う。これは人生の生き方、人生論そのものだと思うからだ。難しいと思う。
『女の仕事じまん』 酒井順子 角川文庫 96/1. 495e(古本)
人は仕事にいろいろな思いや偏見、独特な見かたなどをもつものだ。各個人は驚くほど、独特の偏見やかたよった見方をもつのだろう。服装であったり、環境であったり、安定や堅実、世間体など、ほんのささいな断片によって仕事のイメージはできるあがるのだと思う。そんな頼りないものによって人は職業選択をする。仕事とは難しいものである、さまざまな意味で。
『日本の正体』 落合信彦 小学館文庫 94/3. 495e(古本)
落合信彦の本ってはじめて読むけど、どうなんでしょうか、あまり深みも重みもないように感じられた。押さえるところは押さえているが、ただまとめているだけでそれ以上のものがない感じがしたが、違うんでしょうか。
『人は一生に四回生まれ変わる』 森毅 三笠書房知的生きかた文庫 93/1. 500e(古本)
最近TVで見かけなくなったが、お元気にしておられるんでしょうか。あのひょうひょうとした雰囲気はこの本にも達観した人生観としてあらわれているが、TVのほうがおもしろいかも。
『なぜ仕事するの?』 松永真理 角川文庫 94/7. 476e(古本)
リクルートの編集長をしていたということで読んだが、ちょっと自分の偏見とかキャリアの話が多すぎて、あまりよくはなかった。
『怒れ! 日本の中流階級』 カレル・ヴァン・ウォルフレン 毎日新聞社 99/12. 1800e(古本)
ウォルフレンのような中流階級とかふつうの労働者からの批判をくりひろげる人というのが、最近ほかに見かけなくなった気がする。ヒサンな生産システムの中に踏みつけにされている日本人という現状の認識はほんとに大切だと思うのだが、ウォルフレンの本を読まないと忘れがちになるというのは恐ろしいことだ。
『正直者が馬鹿を見る国民健康保険』 松谷宏 宝島新書 00/12. 700e
保険料が月三万五千にもなった。あまりにも高すぎて払えるわけがないので、抜け道がないかとあわててこの本を買った。他の市町村にひっこせば滞納分は白紙になるとか、四割払えば保険証は交付されるなどの悪用できるウラ情報がのっている。
保険なんて保険料を払えないとどっちみち保険証は交付されないのだから、保険証なしでいったほうがよほど安くつく。保険という考え自体を見直すべきなのかもしれない。私自身が先を恐れて生きるという体質ではないのだ。
『自由に至る旅――オートバイの魅力・野宿の愉しみ』 花村萬月 集英社新書 01/6. 740e
いいなぁ、オートバイで野宿の放浪旅。憧れます。私は寝袋はもっているが、バイクの免許はなく、自転車の長距離はしんどすぎるので、ぜひ免許をとりたい。
この本は野宿の場所とか参考になるが、私は自然の風景が好きなので、疑似体験できるようにもっと風景写真をのせてもらえれば、ありがたったかもしれない。
『バカのための読書術』 小谷野敦 ちくま新書 01/1. 680e
これはおもしろい本だ。本のウラ情報が楽しい。たとえばデリダとかドゥルーズ、フーコーはフランスのアカデミズムでは学生指導を認められていないとか、インテリはフロムをバカにしているだとか、トフラーは学問的に新しいことはいっていない、岸田秀は精神分析を教える教授の資格を剥奪されたなどのウラ情報が楽しめる。
読書術は、なによりもまず興味をもつことが大事だ。これがなければ、どんなすばらしい本もただのクズか石ころにすぎない。本を読まない人は興味と価値観が合致しないだけの話だ。本を読みたいとさせる興味術が開発されなければならない。
『正しく生きるとはどういうことか』 池田清彦 新潮OH!文庫 98/5. 505e
根本的な問いかけがおもしろい。「善く生きるとはどういうことか」「昔の人は不幸だったか」「人はどこまで自由なのか」「自分のものとは何か」などの問いかけが目を引いた。知的には楽しめるかもしれないが、感銘はのこらなかった。
『市場主義の終焉』 佐和隆光 岩波新書 00/10. 660e(古本)
これまでの経済にたいする考え方の流れがひじょうにわかりやすく説明されている。市場主義とリベラリズムという問題はひじょうに難しい。イギリスでは市場主義改革の行き過ぎに選挙民はすでに「ノー」をつきつけた。日本も早晩そういう道をたどるだろうということである。
『日本型悪平等起源論』 島田荘司 笠井潔 光文社カッパサイエンス 94/3. 950e(古本)
精神主義、富国強兵、天皇制、鎖国願望、日本人のモラルなどがたっぷりと語られている。あまり歴史や文化から現在の日本人を規定するのはいかがなものかと思うのだが。
『「官僚」と「権力」』 水野清編著 小学館文庫 01/3. 476e
官僚というのはひじょうに問題だと思うが、なぜこんなに日本のシステムを生産至上主義に縛りつけ、そしてそれをどのように維持、管理しているのかといったことがなかなか外からはわからない。この本でもよくわかるというわけではない。
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01623書評集 100円本の世界 01/6/23.
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