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■031101書評集
 うまくいかない恋愛のもがき方


▼2003/11/2





 『セブン・ラブ・アディクション』 マルシア・ミルマン
 実業之日本社 2001 1600e(古本)

 人には7つの恋愛基本型があり、知らず知らずのうちに同じ行動パターンをくりかえし、その存在に気づかないために愛が終わるという。一見千差万別にみえる恋愛のかたちにも限られたパターンがあるというのである。

 それには初恋型ラブストーリー、ストーカー愛型、シンデレラ型、自己犠牲型、救済型などがあるという。どうなんでしょうか、人の恋愛にはこのような行動パターンがしっかりと刻み込まれているものなんでしょうか。

 著者がいうには人のラブストーリーは幼少期に決定されるがゆえに恋愛の目的はパートナーと幸せになることではなく、両親との喪失感やトラウマを克服したいという願望がこめられているという。半分は事実で半分はそうではないと思うけど。




 『娘の恋愛タイプは母親で決まる』 秋月菜央
 二見書房 2000 1500e(古本)

 女性の恋愛タイプは父親より、母親とその関係によって決まると考えるほうが妥当に思う。母親は人生の身近な手本であり、また性格の元をつくりだすものである。

 この本では娘の恋愛タイプと母親の性格の関係が描かれており、人間関係の妙を見る気がする。たとえば子どものすることなすことにモグラ叩きのような母親は気持ちを素直につたえられない雪女のような娘をうみだしてしまうし、甘やかす母親は娘に依存するから、娘も父親のような依存できる不倫の恋にはまってしまうなど、なるほどとうなずけるエピソートがいっぱいである。

 ほかに男をふりつづけるかぐや姫タイプ、つくして捨てられる鶴の恩返しタイプ、嫉妬と怒りで愛を破壊する西太后タイプ、愛を試してしまうマッチ売り少女タイプなとが紹介されている。同じ恋愛パターンをくりかえして失敗するばかりなら、このような幼少期の役割を反省して脱け出す努力をするべきなのだろう。

 恋愛関係というのは自分の感情の扉を開ける作業のようなものだと著者はいっているが、まったくそのとおりなのだろう。好きな人のことばかり考えて不安や嫉妬や喜びに感情をひきずりまわされる。子どものころには親への不満は抑圧せざるをえなかったが、その感情は恋愛関係において解放されるのである。




 『消費される恋愛論』 菅野聡美
 青弓社 2001 1600e

 大正時代に恋愛論がブームになった。結婚の決定権は親がにぎっており、恋に陥っても結婚できない男女の情死事件があいつぎ、人々に考えるきっかけを与えたのである。その恋愛論や性との関係などをたどったのが本書であり、この恋愛論は現代にも通ずるものであり、または現在の恋愛のかたちのルーツであるともいえるだろう。たぶんこの時代に恋愛の規律や行動規範はつくられたのだろう。




 『恋愛依存症の心理分析』 ピア・メロディ
 大和書房 1992 1900e

 恋人に過度に依存してしまう恋愛依存症は、現代の文化が推奨する恋愛至上主義との線引きがかなりむずかしい概念だと思う。でも病的な失敗をくりかえす人にはこの範疇が適用されて救い出される必要があるのだろう。

 恋愛依存症者は親密さを避ける回避依存症者と結びつく。恋愛依存者は表には見捨てられる怖れを抱いて恋人に依存するが、無意識には親密さを恐れているからである。

 私自身は回避依存症的傾向があり、母親や人との束縛をたいへんいやがるのはまったくぴったりである。ただこれは後天的に群集批判の哲学や隠遁者の文化から学びとった要素もいくぶんかあり、文化的な行動様式でもある。いやもともと回避依存があったからそういう知識に吸いよせられたのだろうか。この依存症という概念は線引きがむずかしい。




 『依存症の女』 衿野未矢
 講談社文庫 2003 533e

 依存症の範疇が日常のさまざまな行動までに拡大されてきている。ケータイ、恋愛、セックス、不倫、買い物、リストカット、海外旅行。異常といえば異常だし、べつだんふつうのことだいえばふつうだし、社会が推奨していることがらであったりするからややこしい。著者がいうには依存することが苦しいことなら依存症だというが、そんな線引きで大丈夫なのか。

 依存症という言葉を他人がレッテル貼りするとき、たんなる中傷や他者攻撃にもちいられそうだし、羨望や嫉妬からその言葉が発せられるとき、もっと問題である。それは才能や能力に結びつく事柄かもしれないのに、その根をつみとろうとする危険な嫉妬かもしれないのだ。依存症概念とは人間をあらたな平板な規格品にするまなざしなのかもしれない。




 『「恋愛戦」必勝マニュアル』 藤田徳人
 講談社+α文庫 2001 540e

 恋愛を科学だとかいうのがあやしいし、著者の顔写真はかなりナルシスが入っているのでヤバイし、ヘンな科学的決めつけとかがあるけど、まあ中身は謙虚に学ぼう。




 『「モテる男」40のマニュアル』 富田隆
 三笠書房王様文庫 2003 476e

 私はあまりモテたいという方向性で生きてこなかったし、自分の好きなことばかり関わってきたが、男の人生の目的は女にモテることに収斂されるという話があるが、ほんとうなのだろうか。女にモテることだけが人生だとすなおに思えたほうがしあわせなのかな〜。




 『大人の恋愛養成講座』 石原壮一郎
 扶桑社文庫 1995 524e(古本)

 ひさうちみちおのマンガがおもしろい。




 『掟やぶりの結婚道』 石坂晴海
 講談社文庫 1999 552e(古本)

 恋愛や結婚についての鋭くて深い洞察だらけで、痛く感服した。引用します。

 「幻想は崩れるよ。でも実際はもっとひどい。エゴ、タカビー、がめつさ、嫉妬深さ、陰湿、冷淡、ヒステリック、まだまだあるけど、そういう生身の女の子のすさまじさに男はことごとく傷つけられながら、ようやく安全な身の置き所を見つける。それがおじさんという立場なんです」

 「会話がない。たったこれっぽっちのことで不倫に走る。なぜなら女にとって「しゃべる」は快楽でありエクスタシーだからだ。その快楽を無視という屈辱的なやり方で取り上げられる」

 「オンナは言葉を覚え、オトコは顔を覚える、と聞いたことがある。自分を小バカにしたようなあの時の顔、ヒスを起こした時の夜叉のようなあの顔、は克明に記憶するらしい。しかし言葉はほとんど覚えない。実際、オンナから見るとオトコの言語記憶能力は赤ん坊並みである」

 まだまだ男と女の鋭い洞察はこの本の中にはたくさんあるが、ふつうの人の声をあつめたこの本はどうしてこんなに鋭い洞察力に満ちているのかと思った。




 『死にゆく妻との旅路』 清水久典
 新潮文庫 2003 362e

 泣きたい気分だったので、妻との最期の旅の記録をつづったこの本を読んだ。経営していた工場がつぶれ、職探しの旅にガンにかかった妻と同行した話がつづられている。「ひとみ、あっちが能登や」――なにげないひとことに泣ける。




 『恋愛学がわかる。』 AERA Mook
 朝日新聞社 1999 1050e

 恋愛論というのは一般書やハウツー本はたくさんあるのだけど、学術書のようなものはあまりないと思う。この雑誌の巻末にあるブックガイドも恋愛の根幹に関わるような探究書はあまりない。といっても私自身が恋愛についてのなにを知りたいのかもよくわからないし、それ以前に私の頭の中はぼーっとしっぱなしなのである。

 この恋愛学のなかで興味が魅かれたのは歴史社会学の宮坂靖子、社会学の赤川学といったところでしょうか。

 ところで現在、性のタブーや貞操観念はものすごい勢いでなくなりつつあり、主婦や若者のなかには複数の異性と関係をもつ人たちが多くなった。このような恋愛の自由競争、あるいは一夫一婦性の禁欲から好色の時代へと転がり始めたいま、私たちひとりひとりは嫉妬や猜疑、不安の渦の中に投げ込まれそうである。どうしましょう? せいぜい傷つかない訓練――ひとりのみに生涯の愛を誓う習慣をファジーにしておくべきなのかもしれない。期待していたことを破られるから人は傷つくのである。




 『恋愛論』 紫門ふみ
 PHP文庫 1990 467e(古本)

 紫門ふみのマンガではなくて、TVドラマは私もたくさん見た。『あすなろ白書』『同・級・生』『東京ラブストーリー』『Age,35』『P.S.元気です、俊平』。でもマンガの原作のほうは絵柄があまり好きではないので(女の子があまりかわいくない)読んでいない。まあこの本もそういう感じかな。




 『女たちは男のここを見ている』 川畑英里花
 KAWADE夢新書 2003 720e

 おお、鋭い。女たちの鑑識眼はさすがだと思う。自慢話に劣等感を見、男同士のつきあいに男の値打ちを見たり、家族とのつきあいにやさしさを見抜いたりと、などなど。でもそうやって男を合格と不合格で分けて参考にはなるけど、オトコもオンナのためだけに生きていられるかってんだ!




 『恋愛の法則36』 紫門ふみ
 角川文庫 2000 514e

 法則の話はおもしろいかもしれない。なぜか賢明な知識を身につけたように思えるからだ。ただこれは法則というより、風か吹けば桶屋が儲かるみたいな話ともいえなくもないが。

 法則は地味なOLのほうが派手なOLより不倫にはまる、国立大の人間は私大出身者に負ける、浮気は否認しても認めても女房は怒る、同性に嫌われる女がモテる、理系男は浮気のような不合理なことはしない、学生時代のスターは社会に出てから大成しない、などなど。理由も納得できる。




 『女心のナゾを解く恋愛教科書』 富田隆
 KKロングセラーズ 1999 896e

 まあ、この本は女心についてなかなか勉強できた。複数の男性とつきあう女性は深い愛情に結ばれた相手がいないからキープ君が必要になる、女性を誘うときは女性に責任回避の余地をのこしてやること、女性は恋愛をこぎつづけなければ動かなくなる自転車のようなものと思っている、ふられたからといって怒りや非難を向けるようでは女性とつきあう資格はない、まわりに優しくしたら彼女には五倍くらいやさしくしろ、女性のわがままは男性の愛情表現がたりないせい、最期の一線を越えたあとほど女性は愛の確証をほしがるなど、う〜んなるほどである。




 『「困った人間関係」の精神分析』 小此木啓吾
 新潮文庫 1999 552e

 この困った人たちのなかには誘惑しておいて最後にはつき落とす女性や男を嫉妬の虜にする女が出てきたりするが、こういう女性って身近にいて悩まされたりしないだろうか。ほかにも困ったひとたちがたくさん出てくるが、エピソートが尻切れとんぼで解決策がひとつも呈示されないのはがっくりときた。この著者の本はいつもしっかりとしていて安心して読めるのに、いちばん知りたいのはそこなんですよー。




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『セブン・ラブ・アディクション』 マルシア・ミルマン 実業之日本社
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娘の恋愛タイプは母親で決まる















消費される恋愛論―大正知識人と性





恋愛依存症の心理分析―なぜ、つらい恋にのめり込むのか











依存症の女たち










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『掟やぶりの結婚道』 石坂晴海 講談社文庫


















死にゆく妻との旅路



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