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■020907書評集
ワンコイン小説本ほか






 『ヌード写真』 多木浩二
 岩波新書 1992 620e(古本)

 ヌード写真についてならわかると思ったのだが、内容は入り組んでいてなにを言おうとしているのかよくわからなかった。性愛が女性を中心にしたものに変わりつつあるということか。



 『日本人はなぜ水に流したがるのか』 樋口清之
 PHP文庫 1989 480e(古本)

 心は水に流したほうがいいと思っている。忘れず、考え、根にもつことは心身ともに悪いと思う。日本人の水に流す知恵は現代では忘れられ、世界基準からは困ったこととされるが、個人的には心は流したほうがいいと思う。流れない水は濁り、物事は澄まないで(済まない)、腐る。




 『男という不安』 小浜逸郎
 PHP新書 2001 660e(古本)

 現代の男は生きにくい時代になったと思う。労働主義のドレイと消費主義の女にはさまれ、身動きができなくなっている。男であることが損な時代だと思う。男について悩むことが必要な時代なのかもしれない。それはたぶん生産主義にたいする疑問そのものなのだろう。




 『身体の文学史』 養老孟司
 新潮文庫 1997 400e(古本)

 身体観の歴史はいままでの人間観をくつがえすもしれないと思うのだが、この本は文学史をたどっているから、わかりづらいところがあった。芥川や三島をちゃんと読んでいないとわからないのかも。




 『ONE』 リチャード・バック
 集英社文庫 1988 670e(古本)

 選択ごとに違う世界があらわれる多次元世界を旅する話である。現実の世界とみなしていたのが幻想だったという最後のどんでん返しがうまかったと思う。リチャード・バックという人はニュー・エイジの作家なのだろうか。世界や人々はひとつであるという世界を知っているようだ。それは頭で知っているのだろうか、じっさいに体験したのだろうか。




 『恋愛小説の快楽』 ぼくらはカルチャー探偵団編
 角川文庫 1990 520e(古本)

 ひさしぶりに小説を読みたくなったのでブックガイドとして参考にした。私は人の評価で小説を選ぶことが多かったので、自分がおもしろいと思う嗅覚をもっと発達させたいと思う。この本ではアメリカ、フランス、日本、ミステリーなどのラブ・ロマンスが選ばれていて、しかし読みたいと思う本はなかったな。




 『ねじまき鳥クロニクル』 村上春樹
 新潮文庫 1994 第1部泥棒かささぎ編 514e(古本)

 村上春樹はまだまだ大人気みたいですね。ほとんど殿堂入りしたみたいだ。私は『ダンス、ダンス、ダンス』あたりまで読んでいて、『ノルウェイの森』でミーハー参入し、<羊三部作>がいちばん好きだ。乾いた、シニカルな文章はたまらなくカッコいいなと思う。しかしこの本ではそのカッコよさは見当たらず、奇妙なファンタジーぽさだけを残していて、たいしておもしろくもなかった。百円で手に入ったから読んだだけで、つづきは百円で買えるかどうかにかかっている。




 『光の旅人』 ジーン・ブルーワー
 角川文庫 1995 619e(古本)

 宇宙人だと名乗る男が精神病院に入れられ、天文学の知識は学者のレベルを超えているという設定がおもしろいと思った。SFだから精神病院がどのように批判されるのかと思っていたら、その男は心に傷を負った多重人格者であったという結末だった。SF的発想に慣れた私には宇宙人が正しいという見方からなかなか転換できず、違和感が結末までつづいた。




 『神さまはハーレーに乗って』 ジョーン・ブレイディ
 角川文庫 1995 495(古本)

 不満だらけの看護婦がハーレーにのった神さまに幸福の方法を教えられる話である。自己啓発の本と同じだが、物語には物語なりの説得力がある。仕事をパート・タイムにしてもらったり、欲張りが自分を傷つける、お返しのあることだけを求めるのはやめろ、といった教訓がよかった。

 でも物語を好む人って自己啓発を嫌いそうだ。自然さを愛し、心の人為性を拒むのが正しいと思いそうだからだ。でも物語が創作であるように、自我も人格も過去の創作だといえるんだけどな。思う、考えるということ自体が自分の創作だからだ。自分が創作者と気づいたときに物語は自由に変えられるのである。




 『ピュタゴラスの旅』 酒見賢一
 講談社文庫 1991 380e(古本)

 ピュタゴラスとエピクテトスの物語があったから読んだ。エピクテトスは力の及ばないことには心をわずらわされないという心の操作法をもっていた。そのことによって奴隷である彼は主人から虐待をうけた。精神の不動さを恐がり、試そうとする人がいるものだ。死も境遇も自分の力の及ぶところではない、魂のみが自由だ、と決意したとき、人は心の安寧を手にいれられるのだろう。私は過去や思考を捨てる術は学んだが、死や境遇まではまだだ。そこまでゆだね、捨てられるか。




 『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン
 創元SF文庫 1977 540e(古本)

 月面で見つかった死体が五万年前のものだったという謎がおもしろい。その謎解きが、いささか専門的すぎるところもあるが、最後までざっと読ませる。人類の起源や未知の文字解読、先進の知能文明、広大な宇宙空間の謎、といった道具立てが魅力的なんだろうな。




 『スは宇宙のス』 レイ・ブラッドベリ
 創元推理文庫 1966 480e(古本)

 ブラッドベリは『火星年代記』が大好きである。TV映画の神秘的な雰囲気がとてもよかった。テーマやメッセージもひじょうに好きである。ということでこの本を読んだが、ちょっと幼稚っぽい物語が多かったかなと思う。「浅黒い顔、金色の目」は火星に同化してゆく地球人を描いていて、何年か後にはそれすらも忘れているという不思議な感じがよかった。




 『町でいちばんの美女』 チャールズ・ブコウスキー
 新潮社 1967 2600e(古本)

 汚い言葉に女との性交、みじめな労働、競馬や作家、犯罪とか病気が語られている。ワイルドでアウトロー的な生きかたはカッコいいと思う。汚いののしり言葉もたいへんおもしろい。みじめであわれな日雇い労働のことも語られていて、私もたいへん強く共鳴するところだった。このブコウスキーという作家は世の中のキレイ事をいっさい葬り去りたかったのだろうか。私は彼の労働観がおもしろいと思うから、また読みたいと思う。




 『ソフィーの世界』 ヨースタイン・ゴルデル
 NHK出版 1991 2500e(古本)

 百円で買えたことと、哲学史を学ぶのも悪くないと思ったから読んだ。プラトン、デカルト、ヒューム、ヘーゲルの本とかは読んだことはあるけど、教科書的な歴史は読んだことがない。勉強させてもらった。ソフイーはヒルデの父の創作の登場人物だという筋書きはかわいそうだったな。思い入れはソフィーのほうが強かったから、ヒルデのほうが幻のほうにひっくり返ってくれたほうがうしれかったかな。

 収穫としてはロマン主義は19世紀のヒッピー、他人の痛みに冷たいという「シニカル」はギリシャのキュニコス派が語源、感情にひきずりまわされない「ストイックな落ち着き」はストア派が語源など、知らないことを学べた。私はストア派の心の平安の技術に学ぶことが多かったのだが、どうも他人にはやっぱり評判がよくないのかな。

 ギリシャや近代の哲学というのはテーマや問い自体が興味をもてるものかと思う。なぜそんなことを考えなければならないのか現代人にはわかりづらい。問いの必要性を理解させることが第一だと思う。興味はそこからはじまる。




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