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■020608書評集
身体を知る、筋肉を知る



 『整体 楽になる技術』『写真でわかるストレッチング』『体の疲れをとる本』『愛するということ』『男と女のLOVE2ブック』『男のH・女のH』『男はときどきいればいい』『視力復活眼筋トレーニング』『コンシャス・ヒーリング』『人体の謎A』『ウソ、ホント!? 「からだの不思議」の雑学』『「疲れ」をとる裏ワザ・隠しワザ』『ガンバリズムが歯を壊す』『聖なる予言』


▼2002/6/8.




 『整体 楽になる技術』 片山洋次郎  ちくま新書 2001 720e

 身体を現代思想的に語った本はそうない。書店に並んでいる健康医学の本は読者の知的水準をバカにしたような教科書的な本ばかりだ。だから身体についてもっと深く考察してみようという気にもならない。

 この本は不安や怒り、緊張したときにわれわれの身体はどうなっているのかということや、われわれの身体はいまどのような状況におかれているのかということが、現代思想的に探られている、知的好奇心を誘う優れた本だと思う。おかげで身体をもっと探究してみようという気になった。

 とくに感情と身体の明確な関係図は把握したいと思う。緊張すれば胸が緊張し息がつまり、呼吸と眠りは腰椎5番と関係が深く、頭と目の疲れは首の緊張と関係がある、胃が痛くなるのは腹直筋とみぞおちが硬くなるから、下腹部とみぞおちはシーソーの関係になっているなど、こういう身体の図式はぜひとも頭に入れておきたい。

 われわれはあまりにも自分の身体のことを知らない。怒りや恐れのときに身体がどのようになっているのかも知らないし、客観的な知識ではなくて、内側から自分の身体を知るということもない。そしてわれわれは身体の犠牲者になる。自分の身体を実感や身体感覚から知らなければならないと思う。




 『写真でわかるストレッチング』 監修 笠原寛子 新星出版社 2001 1400e

 私はストレッチが好きである。体の筋肉が伸びてとても気もちがいい。ところどころが痛くなったりして、自分の体の硬さにびっくりする。

 筋肉の緊張とは、心の緊張でもある。怒りや恐れがからだの緊張となってあらわれる。筋肉の緊張とはそのまま精神の緊張である。

 しかしわれわれは怒りや恐れ、緊張を感じても体のどの部分が緊張しており、それをどのようにして解いたらいいのかわからない。精神的なストレスによる緊張というのは長時間つづき、解き方もわからない。そしてそれは精神の不安定や血行障害による病気をおこしたりする。

 だから自分の身体の緊張を知り、それを解きほぐす方法を知るためにはストレッチで自分のからだの状態を把握しなければならないと思うのである。ストレッチとは体のスポーツやフィットネスだけではなくて、精神の緊張の解放でもあるのである。

 こういうストレッチ・ブックというのは、ほかの本のように一から順番に読み進めればいいというわけではないので扱いがむずかしいが、基本パターンを頭に叩き込んで、自分なりの筋肉がよく伸びるバリエーションを自分で開発してゆくのも賢明な使い方なんだろう。意外なところが伸びたりする。




 『体の疲れをとる本』 五味雅吉 青春出版社プレイブックス 1981 730e(古本)

 私は心理学の本は読んできたけど、身体から心を癒す方法についてはほとんど触れてこなかった。精神は精神で、身体とはまた別のものと思ってきたからかもしれない。心とは身体の緊張であり、内臓感覚である。それを知ったのなら、身体から癒さない法はない。

 この本はもちろん体の障害や病気を治すという本であるが、身体は精神であるという考えにならうのなら心の癒しにも使えるはずであり、病気を癒す方法から身体のしくみも知ることもできる。

 この本は骨盤調整法によって自分の体を医者やクスリにたよらずに自分でも治せるという本である。チューブを巻いて回したり、もんだり、さすったり。15年で90刷近くも増刷されているびっくりするほど売れている本みたいです。




 『愛するということ』 エーリッヒ・フロム 紀伊國屋書店 1956 1000e(古本)

 愛とは特定の人間に対する関係をいうのではなく、ひとつの態度、世界との関係との仕方というのがすばらしい。

 愛した人以外をだれも愛さないことが愛の強さの証拠だと思う人がいるが、それは愛ではなく、エゴイズムにすぎないという。ひとりの人を真に愛するならば、すべての人を、世界を、生命を愛するのである。

 「他人のためだけに生きる」非利己的な人の批判も驚いた。かれは自己犠牲的で利他的なことにほこりをもっているが、かれは人を愛することもできないし、楽しむ能力もない。かれは自分を犠牲にしたために自分を愛せず、そして他人も世界も愛せないのである。世界を愛するためにはまず自分を愛せということである。

 私はフロムの『自由からの逃走』『人間における自由』のような批判的な本は大好きだが、どうも「愛」という積極的言葉にはアレルギーがあった。私は理想主義的すぎるのかもしれない。愛に利己性やエゴイズムが感じられたとしても、愛の言葉を嫌う人間に他人や世界は愛することができないし、自分すら愛することができないのである。




 『男と女のLOVE2ブック』 監修 志賀貢 日本文芸社 1999 1500e

 こんな本を書評に出していいもんでしょーか。いちおうふつうの本の体裁をとっているから書評集にいれよう。開けてびっくり。この本はカラー写真によるセックス指南書である。愛撫とか体位を紹介した本であるが、このようなテクニックというのは女性の身体全体を目醒めさせる行為ということがわかる。全身の感覚や血液の流れがよくなり、からだ全体が活性化し、全一性を獲得する。女性が絶頂になるとき、「イク=逝く」というが、天国への神秘的合一はほんとうに果たせているんだろうか。




 『男のH・女のH』 桜井秀勲 三笠書房 2000 1200e(古本)

 エッチなマンガがおもしろい。本文はあまり記憶に残らない。広く浅くでは、説得性や染み入るものがないんでしょう。




 『男はときどきいればいい』 北原みのり 祥伝社文庫ノン・ポシェット 1999 533e(古本)

 なるほど、男論理の暴力的で淫靡なセックス観を覆すか。カラッとしていて、楽しそうで、美しい世界。そして女性の快楽は男から与えられるものではなく、自分から楽しむものであり、セックスはそれをシェアする行為。快楽にタブーや抑制があまりにも強いと心から楽しめないし、それはすなわち自分も愛していないということだそうだ。快楽に抑圧が強すぎるのはたしかにかわいそうだ。




 『視力復活眼筋トレーニング』 若桜木虔 青春出版社プレイブックス 1988 780e(古本)

 勉強や読書によって目を酷使するから目が悪くなるのではなくて、目をほとんど動かさないから、目の使い方が悪いから視力が落ちるのだそうだ。

 ずっと同じ体勢で固まった眼筋は疲労がとれないし、血行不足になるし、休息したら眼筋を動かすこともないから眼筋はますます衰え、視力が落ちるそうだ。使うからではなくて、使わないからだ。

 ストレスによって視力低下が起こるというのもたしかに納得できる。ミスや恐れによって、目は緊張する。この目の緊張が血行不良をひきおこし、疲労物質を蓄積させ、眼筋は固まったまま衰えてゆく。筋肉の緊張を解き、鍛えることはひじょうに大切だと思う、体のどこと限らず。

 速読法によって視力回復が図られているが、眼筋の緊張、衰えが視力低下の原因というメカニズムを理解できただけでも、ド近眼の私には朗報である。




 『コンシャス・ヒーリング』 ジョン・セルビー  日本教文社 1989 1429e(古本)

 筋肉の緊張を感じ、リラックスするエクササイズがすばらしい。あごやのど、肩や胸、腹、骨盤などの緊張をたしかめて、リラックスしてゆく。思っただけで緊張は解けるのかと思うが、緊張と弛緩というのはイメージの力が強いのかもしれない。

 怒りはあごの筋肉を緊張させ、愛は呼吸と心臓に関係しており、あごや声帯をゆるめる、不安は腹筋を固める、などの感情と筋肉の関係がのべられているのもよい。

 呼吸と心臓の鼓動に注意を向けることによって、体全体の気づきが広がるというのは覚えておきたい方法である。

 現在の瞬間を生きなくなる理由が、未来や過去という空想による逃避であるという説明もすばらしい。われわれが現在の瞬間にもどるのは、身体の感覚に同一化したときだけである。このときに癒しが起きる。

 この本は病気から免疫力を強めるためのプログラムであるが、驚くほど心の癒しや身体との合一化をうながす方法と合致している。ほとんど悟りへと向かう優れた精神的修行のプログラムのようだ。でもその中にこそ、多くの癒しがつまっているのだろう。




 『人体の謎A』 博学こだわり倶楽部[編] KAWADE夢文庫 1999 476e(古本)

 からだを知るにはこういう雑学ブックに手を借りるのもいい。からだのしくみについての本は自分の身体実感からはほど遠いものであるし、人体についての素朴な疑問を解いてくれる本のほうがいい。

 顔色が青くなるのはショックで皮膚近くの血管が収縮するからだそうだ。直立になった人間は内臓の重みが肛門にかかり、痔になるそうだ。肩こりは血行障害であり、筋肉が硬くなり、老廃物が神経を刺激するからである。

 寝ているときカゼをひきやすいのは筋肉はリラックスし、熱が発生せず、血管もひろがり、熱が逃げやすいからである。眠くなると目がかゆくなるのは、眠らせようとして涙腺が減るからである。

 雑学書を読んだからといってどうなるわけでもないが、からだを知るための本って案外ほかにはないんだな。




 『ウソ、ホント!? 「からだの不思議」の雑学』 雑学ものしり倶楽部 講談社+α文庫 2001 740e(古本)

 脳は血液と酸素の二割を消費する大食漢だそうだ。鳥肌というのは毛を逆立てるためのなごりだそうだ。寒いときにからだが震えるのは熱をつくりだすためである。背骨がS字に歪曲しているのは衝撃を上下に逃がすため。

 食後の運動で脇腹が痛くなることがあるが、胃腸が働くための警告であるそうだ。白目の充血は疲労による老廃物を運び去るため。足を組むのはたまりがちな足の血液の循環をよくするため。

 冬山で眠ってはいけないのは寝ているとき体温が下がるからである。腹が立つとき、ほんとうに胃は平滑筋によって立つ。酸っぱい物には疲労物質である乳酸を外に出す働きがある。




 『「疲れ」をとる裏ワザ・隠しワザ』 平成暮らしの研究会[編] KAWADE夢文庫 2001 476e(古本)

 からだを癒す方法がこんなコンパクトで安い本にびっしり収まっているなんてオドロキである。かなりおトクで、からだの不調を感じたとき、効き具合をためしてみるのもいいかもしれない。「家庭の医学」みたいに一家に一冊、カバンに一冊あってもいいかもしれない。

 読むだけでもからだの不調に必要なこと――血の巡りをよくするということがわかるだけでも価値ありだな。痛くなったり、不調になったりするところは、血液が滞っている。酸素や栄養がいきわたらなく、疲労物質も運び去られない。だから血行をよくするというのが道理みたいだ。

 おもな対処法としてストレッチとツボ、食べ物があげられている。自分の身体の不調なところがこれらのワザによって速効に治せるのなら、ほんと楽しいだろうな。思い通りにならない自分の身体の主になれたらすばらしい。




 『ガンバリズムが歯を壊す』 小川博章 現代書林 1997 1200e(古本)

 ストレスによるアゴの噛みしめが虫歯や歯周病の原因だという本である。顎まわりの緊張が長くつづくと、血液循環が悪化し、免疫細胞の運搬も不足し、抵抗力が低下するというわけだそうです。

 私も覚えがあります。顎のあたりの緊張が長くつづいたとき、やっぱり歯はぼろぼろと欠けていった。それは緊張や不安を必死にアゴで食いしばるような時期だった。だからストレスによる歯の悪化は自分でも納得できる。

 ストレスのとき、人間は筋肉を固める。筋肉の鎧によって外敵と闘う準備をするわけだ。末梢血管は収縮し、傷口がふさがるよう血液はどろどろになり、内臓や皮膚から血液は奪われ、闘うための筋肉に酸素やエネルギー源がどんどん送り込まれる。

 この反応が現代の鎧を必要としないストレスによってもひきおこされ、しかもストレスのたびにわれわれは外敵と闘う生か死かの過剰反応をおこなってしまうのである。愚かである。もっと愚かなのは過去と未来を想像して、ストレスを始終ひきのばすというわれわれの大脳の働きである。頭をまっ白にすることが必要だ。

 われわれは理想をもって自分を嫌ったり、本当の自分を隠そうとすると、緊張し、顎を噛みしめる。対処法としては舌を上顎につけると噛みしめは防げ、また力が必要なときは噛みしめではなく、臍下丹田という下腹部に力を入れればいいそうだ。動じない人を「腹のすわった人」という。




 『聖なる予言』 ジェームズ・レッドフィールド
 角川書店 1993 1800e(古本)

 あれ、なぜこのような本がベストセラーとなったのだろう。神秘体験の記述はすばらしかったにせよ、霊的なことでの卓越性はほとんど認められなかった。サスペンス仕立てがおもしろかったのか。




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